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** after eno.892... **
「…………おい、何でお前さんがにゃんこ達といるんだ。」
旅を同行することになっていた白い猫の子・にゃもと一緒にかにパンを食べていた毒百足の精モモコを、蘇芳は摘み上げた。
蘇芳はそのままにゃもたちとは少しはなれた木陰に移動すると、目の高さまでモモコを持ち上げ少し顔をしかめる。
それは昨日(3日目)の出来事である。
「あれま、旦那……顧問の旦那じゃないかい?」
見渡す限りの砂地の中、日陰を探して辺りを見回していた時のことである。
艶やかな女の声に蘇芳は振り返る。
……誰も居ない。
気のせいか、と歩を進める。
「ちょいと旦那…アンタ、あのボケパンダと同じ事するんじゃないよ!」
――蘇芳って、私の前では煙草吸わないよね。どうして?
蘇芳は煙草に火をつけながら、まだ破璃が妻ではなかった頃の言葉を思い出す。
元々、嗜む程度にしか煙草は吸わない。
そして、吸うのは、彼女が傍にいない時……決まって、独りでぼんやりしてる時だ。
紅い悪魔は独りでいる事には慣れていた。
妻の前世と出会い、そして死に別れ、生まれ変わった彼女に出会うまで、誰にも寄り添う事は無かった。
気の遠くなるほどの年月も、彼女と再び出会えると信じていたから、平気だった。
ニコチン中毒は、悪魔である彼にとって意味がなかった。
常習性なんてもちろんなかった。
それでも、自然と煙草に手が伸びる事があった。
子供騙しな精神安定剤でも、無いよりマシだと思っていた。
あの時は何と言ったんだっけ…。
ぼんやりと立ち昇る紫煙を見つめながら、紅い悪魔は記憶辿る。