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** after eno.892... **
「…………おい、何でお前さんがにゃんこ達といるんだ。」
旅を同行することになっていた白い猫の子・にゃもと一緒にかにパンを食べていた毒百足の精モモコを、蘇芳は摘み上げた。
蘇芳はそのままにゃもたちとは少しはなれた木陰に移動すると、目の高さまでモモコを持ち上げ少し顔をしかめる。
「お前さん、いい男探しに行くんじゃなかったのか?」
「旦那も無粋な事言いなさんな……旅は道連れ世は情けってゆうじゃあないか。」
摘み上げられたとは言え涼しい笑みを浮かべ、ふぅっと煙草の煙を蘇芳に吹きかける。
「旦那こそ、なんだって子供達と行動をともにしてるのさ?」
「にゃんこの爺さんに木刀とか作ってもらってたんだ。」
「あらあら、世の中はそんなに狭いもんなんだネェ。」
モモコが意味深に笑うと、蘇芳は少しだけ眉をしかめた。
「どういう意味だ?」
「アタシはてっきり旦那に父性がわいたのかと思ったよ。」
「お前さんなぁ、お喋りのしすぎは命縮めるだけだぜ?」
「にゃん太たちは知ってんのかい?旦那に双子のお子さん達がいr…」
「…そういやお百サンのサイズってのは、アレだな。」
蘇芳がおもむろに口を開くと、ギザギザの鋸のような歯が現れた。
「丸齧りするには、いいサイズだよなぁ。」
モモコは一瞬硬直する。
「ちょ…旦那ッ!アアアアタシは何にもいいませんってバ!」
摘み上げられた指から逃れようとジタバタもがく。
「あの子達に余計な事言ったりしな………ヒィィッ!」
急に解放されたモモコは落ちかけ、慌てて蘇芳の手にしがみつく。
「愚か者め。俺様は他種を食う悪魔ではないぞ。お前さんなんぞ食うか。」
「ア、アンタの場合は何処までが冗談かわかりづらいんですよッ!」
モモコは蘇芳の手によじ登って襟元を調える。
「ま、言質は取ったからな。口は慎めよ。」
「旦那は女性に対する気遣いが足らないよっ!ちょっと乱暴なんだよっ、全く…」
背の高い草の上に降ろしてしてもらいながら、毒づくモモコ。
「そんなんじゃ、すぐ愛想尽かされちまうよッ。モテナイよッ。」
「別に困らんなァ。奥さん以外はどうでもいいからなァ。」
「あぁー、そうだったね。アタシとした事が……これだから愛妻バカは…」
「なんだ、お百よ。俺様と破璃のノロケ話が聞きたいのか?」
「それは傷心旅行中のアタシに対するイヤミかいっ!」
奇生物愛好家サバスと名乗る男と遭遇すのは、これからすぐのこと。
島に来てからの初めての試練である――。