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あれから、どれくらい時間が経ったのだろうか。
サバスに破れ、気がついたら満天の星空の下、砂漠に放り出されていた。
何一つ物音のしない静まり返った夜の世界。
まだ、体がだるい。
まだ、体がだるい。
「……肋骨、逝ったかなァ…ん…大丈夫、か…?」
蘇芳は静寂を破るようにボソッと呟いた。
蘇芳は身体を起こさず、軽く首をひねって、辺りを見回す。
すぐ傍にネロとセツリが倒れている。
「……おーい、お前さんたち……大丈夫かぁ?」
ネロの腕が動いた。ピースサインを作っている。
セツリが「…火……貸して…」とくぐもった声で応える。
とりあえず、命は無事のようだな。
蘇芳は軽く安堵の息を漏らす。
「ネロよ……お前さんは、もうちょい腹筋鍛えた方が良さそうだなァ。」
蘇芳は揶揄するように言った。
「あと、セツリ……悪かったな。最後に、お前さんを残しちまってさ。」
寝ッ転がったままライターを投げる。
紫煙が立ち上るのが見えた。
蘇芳は、溜息を一つ。
自分の能力に、慢心していた。
今までの雑魚相手では、どれだけ自分の力が失われているか計れなかった。
今回のサバスにしたって、桜に囚われる前の全盛期の自分ならば、苦はなく勝てたはずだった。
能力が激減しているという事実を軽んじていた。
そんな、自分の浅はかさが敗因の一つだ。
「俺様も修行が足らん。」
今はない右目を隠す眼帯を右手で覆う。
サバスを倒して得る情報で、契約の悪魔を出し抜くつもりだった。
あわよくば宝玉の一つや二つちょろまかすつもりでいる。
相手の意のまま操り人形となる気は、更々ない。
左手をまっすぐと星空へ伸ばす。
月を掴み取ろうとするかのように指を広げる。
左手薬指の指輪が鈍く光る。
一瞬、眩しそうに金の猫目を細め、そして、ゆっくりと閉じる。
早く、彼女に逢いたい。
ただ、それだけなのに。
……トサッ。
急に力を抜いた左腕が、軽く砂埃を立てて地面におちる。
「なぁ、お前さんたち……前向きに考えりゃいいよな。」
寝そべったまま、相変わらずのノンビリとした口調。
「俺様達の現在の力量の指針を得たって事にすりゃいいんだ。」
負けた事をグダグダ言っても仕方がない。
二度、負けなければいい。
未来の勝ちに繋げればいい。
そう。
こんな事で出鼻をくじかれるほど、自分の心は弱くない。
蘇芳は大儀そうに半身を起こして、煙草を口にくわえる。
ライターを返す様にセツリに手で促しながら、ニヤリと笑う。
「……んじゃ、明日から兎跳び10週でもするか!」