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紅い悪魔が降り立ったのは偽島唯一の波止場。
いつもはこんなに混んでいないのに、こりゃ酒場も混みそうだ、と、船乗りがぼやく。
まるで冒険者の入れ替えしてるみたいだ、と紅い悪魔は思った。
黒いマントをたなびかせ、ゆったりとした歩調で人込みをすり抜けていく。
何気なく振り返った視界の端にパンダが過ぎる。
そういえば、自分がまだ平社員だった頃、やたら赤いパンチグローブの似合うパンダ系獣人がいたな、と思う。
彼は元気にしているだろうか。
ずいぶん昔に会社を辞めて行った。
紅い悪魔は、足を止めた。
パンダの傍らに、一瞬見知った少女を見た気がしたからだ。
自分が姉のように思っている女性の娘。
自分の愛する妻の義理の父である男の娘。
いつだったか黒髪と無愛想な具合が小憎たらしい父親そっくりだと言ったら、義姉さんはとても情が深いのよ、と、妻に窘められた事を思い出す。
――だったら、俺の事、怒ってるんだろうな。
自分は彼女にとって大事な義妹を奪った上に泣かせてる男だろうから。
「………破璃に今すぐ逢いたいなァ。」
台詞とは裏腹にのんびりとした口調。
紅い悪魔は再び歩き出す。
長い指で紅い髪をかき混ぜながら。
困った時のクセだと本人は気がついていない。
程なく、彼は旅の仲間と出会う。
彼を愛する人の元へ導く旅の仲間と。
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